書き物軸物

芳川越山 春日懐古(春日山懐古の誤記か?) 七言絶句

以下の翻刻・訓読・語注・現代語訳・コメントは村井道明氏のご教示による

撮影:四国大学 / 分類:20230909-J25

人去峰頭粉堞傾 八州風物鎖榛荊
英雄遺恨深於井 住得群蛙不断鳴
  春日懐古 越山山人

訓読

人去りて峰頭の粉堞(ふんてつ)傾き、
八州の風物 榛荊(しんけい)に鎖さる。
英雄の遺恨 井よりも深く、
住み得て群蛙 たえず鳴く。

語注

【粉堞】ふんてつ。城壁の上のギザギザした部分。
【榛荊】しんけい。いばら、おいしげったいばら。

現代語訳

人がいなくなり、峰の上の城郭は、白く砕けた土塀もろとも崩れかけている。
かつて八つの国々に名を馳せたこの一帯の景色も、今は雑木やいばらに閉ざされてしまっている。
ここで散った英雄たちの無念は、井戸の底よりもなお深く残っている。
しかし今、この地に住み着いているのは群れなすカエルばかりで、ただ絶え間なく鳴き続けているだけだ。

コメント

「春日山懐古」と題し、『越山遺稿』所収。遺墨の詩題は、春日山(かすがやま)を一字抜かして、春日(しゅんじつ)に誤記したものか。春日山を詠じた懐古詩(歴史や旧跡に触発されて、昔を懐かしみ、今との隔たりを味わう漢詩)である。
春日山(かすがやま)は、越後国頸城郡中屋敷春日山(現在の新潟県上越市春日山町)にある城山。上杉謙信公の居城として知られる春日山城跡がある。天守・本丸裏手に大井戸跡があり、今も枯れる事なく水を湛えている

注記

*越山々人 芳川顕正(あきまさ) 天保十二年1842~大正九年1920 日本の官僚・政治家。旧姓原田、号越山。

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