絹本縦一〇六×横三二㎝
以下の翻刻・訓読・現代語訳・語注は村井道明氏のご教示による。

讀誦聲中山月欹 陰蟲抵死訴數里
半簾香霧示將濕 已被闍黎聖得知
題源語夕霧焉 五山桐孫
訓読
読誦の声中にして 山月欹(そばだ)ち、
陰蟲 死に抵(いた)りて 訴うること数里。
半簾 香霧 示してまさに湿(うるお)わんとし、すでに闍黎(じゃり)聖(ひじり)の知るところとなる。
題するところの源語 夕霧なり。
現代語訳
読経する声が響きわたるなか、山の上には月がかたむいている。
暗がりでは小さな虫たち(コオロギ)が、命をふりしぼるように、何里も先まで届きそうな声で鳴き続けている。
垂らした簾の半ばまで、香ばしい夜の霧がただよい出てきて、いまにも湿り気を帯びそうに見える。
そうしたすべての気配を、尊い僧はすでに悟りとっている。
語注
【讀誦】どくしょう。声を出して経文を読み、また、唱えること。読経(どきよう)。
【欹】そばだてる。かたむける。
【陰蟲】いんちゅう。陰の季節である秋の虫。コオロギの類。
【半簾】はんれん。 半分ほどおろしたすだれ。
【香霧】こうむ。香しい夜霧。
【闍黎】じゃり。阿闍黎の略で、僧の尊称。
【聖】ひじり。高徳の僧。
メモ
*五山桐孫(まさひこ) 菊池五山


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