書き物軸物

亀田鵬斎「秋日雜詠」

絹本縦一二一×横五一㎝
以下の翻刻・現代語訳・コメントは村井道明氏のご教示による。

撮影:四国大学 / 分類:20230909-J23

秋光森爽晩暉時 閑歩渓橋野水湄
叢竹烟籠没骨畫 遠山黛抹無聲詩
雲明橘柚村邊屋 風冷木槿籬外旗
獨立斜陽頻悵望 満江霞影焼鸕鶿
秋日雜詠一首 鵬斎老人書

現代語訳

秋の夕暮れ、澄んだ光が森を満たすころ、私は渓流の橋や野の水ぎわを、あてもなく歩いている。
竹むらは薄霞に包まれ、没骨の水墨画のように輪郭を失い、遠い山なみは、眉をなぞる墨のように静かで、声なき詩そのものだ。
明るい雲の下では、村はずれの家々に橘や柚が色づき、冷たい風にあおられて、垣根の外の木槿が旗のように揺れている。
私はひとり、斜めに沈む陽を前に、何度も立ち尽くしては物思いに沈み、川いっぱいの霞と夕焼けが、そこにいる鵜さえも炎のように染める光景を見つめている。

コメント

「秋日雜咏」(四首の内、第二)と題し、『鵬斎先生詩鈔』所収。遺墨は第八句の「焼」を脱字ヵ。
鵬斎の書は現代欧米収集家から「フライング・ダンス」と形容されるが、空中に飛翔し飛び回るような独特な書法で知られる。

メモ

*鵬齋老人 亀田鵬斎

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