絹本縦一三五×横四三㎝
以下の翻刻・訓読・現代語訳は村井道明氏のご教示による。

清明時節日方遅 單辦重葩次第披
穠李妖桃皆避舎 遊蜂戯蝶幸同時
地雖西土應無異 天在東方似有私
江社詩僧近歸化 自言初見此花奇
櫻 詩佛老人行
訓読
清明の時節 日いまだ遅く。
單弁の重葩 次第に披く。
穠李 妖桃 みな舎を避く。
遊蜂 戯蝶 幸いに時を同じくす。
地は西土といえども まさに異なること無し。天は東方に在りて 私あるがごとし。
江社の詩僧 近く化を帰し。
自ら言う 初めて此の花を見ること奇なりと。
現代語訳
清明のころ、昼の時刻もだいぶ長くなってきた。
一重咲きや八重咲きの花が、順々にほころび開いていく。
にぎやかなスモモの花も、なまめかしいモモの花も、みなこの花には道をゆずって、遠慮しているかのようだ。
遊び回るハチや、ひらひら舞うチョウまでもが、ちょうどこの花と同じ時期にめぐりあえた幸運を、喜んでいるようだ。
ここは中国の西の方の土地で、土地柄は東国と違うはずなのに、空だけは東の国に、ひいきしているかのように、この花を特別に美しくしているように思われる。
江南の社に仕え、詩をよくする僧がいて、このごろ仏の道に帰依して出家したばかりだが、その僧もこう言っていた。
「私も、この花のような見事な桜を見るのは、生まれて初めてだ」と。


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