紙本縦二七・五×横三〇㎝
以下の翻刻・訓読・現代語訳・語注は村井道明氏のご教示による。

暁行
孤村人已起 隔榭一燈明
葦壁霜如雪 丁々扣屨聲
乙丑初冬録近製江六々園主人
棕隠
訓読
暁に行く。
孤村、人は已に起き、
榭を隔てて一灯明らかなり。
葦壁、霜は雪の如く、
丁々として屨を扣つる声。
現代語訳
人里離れた小さな村では、もう人びとが起き出している。
離れの東屋の向こうに、一つだけぽつんと灯りがともっている。
葦で作った粗末な壁には、霜が白く降りていて、まるで雪のようだ。
コツコツと草鞋を打ち鳴らすような足音だけが静かに響いてくる。
乙丑の年の初冬に作った最近の作を六々園主人のために記した。作者 棕隠。
語注
【暁行】ぎょうこう。夜明けに出かけること。
【榭】しゃ。うてな。たかどの。
【葦壁】葦で作られた壁・垣・仕切り。
【乙丑】文化二年(一八〇五)。
【六々園主人】遠藤春足(えんどう はるたり)。


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