紙本団扇
以下の翻刻・訓読・現代語訳・語注は村井道明氏のご教示による。

齋氿湘竹製來工 點渦聲看浪拍空
莫怪座間爽風起 手翻八月湖江雄
鵬斎老人
訓読
斎氿の湘竹、製して工なり。
渦を点じ声して、浪の空を拍つを看る。
怪しむ莫かれ、座間に爽風の起こるを。
手に翻す八月、湖江の雄。
現代語訳
斎室のほとりの小さな池に、湘竹で見事な細工をこしらえた。
水面に渦が立ち、波が空へと打ち上がるさまを、音までも感じながら眺めている。
座っているあたりに、さわやかな風が吹き起こるのを不思議がることはない。
八月の湖や大河の雄大さを、この手のひらの上でひっくり返しているのだから。
語注
【湘竹】中国・湖南省の湘江流域、とくに九嶷山や洞庭湖周辺に自生するとされた竹で、竹の節と節の間に涙の跡のような斑点があるのが特徴。
【八月湖江雄】孟浩然の「八月湖水平」を踏まえる。八月に水満ちる洞庭湖と長江の壮大な景観全体を象徴的に指す。
メモ
『近世漢学者詩人 遺墨集』20頁の作品。
*谷文晁 宝暦十三年~天保十一年(1763-1841) 五山堂詩話巻三に文晁の漢詩が掲載されている。亀田鵬齋、酒井抱一とは「下谷の三幅対」と称された。
辞世 ながき世を化けほせたる古狸尾先なみせそ山の端の月
(なお文晁の落款については「かけじく屋」参照)


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