摺りもの

六々園大人撰/狂哥五十三次 東海道中双六 催主 柯撰堂半分

撮影:四国大学 / 分類:20231217-A131

◎日本橋から戸塚まで
  江戸日本橋
日本はし けさたつはるの ぎょうれつの
さき道具道具とも 見やるやり梅
           深雪庵卯時
  品川
のりにまて 紫見する 品川に
江戸の自慢の はなの高縄
            文堂貫道
  川崎
さき匂ふ 梅かかハさき とまりして
うぐいすとのミ ワふる旅人
           大家多久美
  神奈川
神奈川の 黒薬くろぐすりより 初音をハ
きゝて嬉しき 宿のうくひす
            酒上惚則
雲駕くもかごも けさハ休みて たんさくの
かき初をする かな川の宿
          手廼屋和歌持
  程かや
梅もさき うぐいすも鳴きて 歌人うたびと
やどりにもよき ほとかやの宿
       トミ丘 日昇亭照輝
  戸つか
ミつるきの とつかの宿の 名もしるく
ひかりとうとく 見る初日はつひかけかげ
              卯時

◎藤沢から沼津まで
  藤さハ
春くれハ 藤沢寺の 上人しょうにん
口髭ほとに たるる青柳あおやぎ
            紀廼面也
  平つか
のとかさや なりひらつかの 宿口やどぐち
歌よんてゐる 藪のうくひす
           鬼帳面直丸
  大いそ
うぐいすと 相舎あいすつりせん たひ人の
たとり付たる 梅沢の宿
           不老居高行
  小田原
提灯に 名のあれハとて 小田原の
宿の軒端のきばに ひをともすむめ
           万葉亭哥月
  はこね
不二山ふじやまも かくれて見えず からくりの
箱根に霜の いとをひく
              哥文
  みしま
くるゝまて 冬の景色の 山のはも
ミしまにかハる 春のあけぼの
           温故堂今人
  ぬまづ
沼津てふ 宿をハいでて にこりにごりにハ
そまぬはちすの ふしを見るかな
              貫道

◎原から由井まで
  はら
星かとも 見るもことわり ひさかたの
あまのはらてふ 駅のしらむめ
           千万齋年満
  よし原
傾城けいせいの はたへはだへの雪の 不二ふじめで
とくるも春は よしハらの宿
              卯時
とまれとて よし原すずめ ちやちやくちやちゃちゃくちゃ
よくもさへつる 春の夕暮ゆうぐれ
              善堂
朝霞あさがすみ はれて高根たかねへ 道のりの
くり毛も見ゆる ふしの牧駒まきこま
            物ノ早丸
白酒しらざけを くみ猪口ちょこのみか のどかさに
手にとるやうに 見ゆる不二山ふじやま
     コマツシマ 開田軒米満
  かんハら
やすめとて 春はかすみの 袖ひきて
客にすゝむる 酒のかんハら
           桃垣内哥文
  由井
水ぬるむ 由井ゆい春辺はるべハ わくかごと
しゃくふりてくる 同者どうじゃいくくみ
             六柯園

◎興津から藤枝まで
  おきつ
羽衣はごろもの あらとひ飛びても かへりたし
まつといふなる いものあたりに
           千里亭駒子
  江尻
武士もののふの やりの江尻に かよへる
梶原山かじわらやまの 梅かかけすゑ掛け据え
           千霍亭万亀
  府中
豆売て 豆にる人も なきになと
ふちうになける 春のうぐいす
          枇杷ノ屋鈴成
  まりこ
むらさきの かすみのいとを かけてけり
まりこの宿の はるのあけほの
              駒子
  おかべ
とうふにも 名あるおかへに とまらんと
朧月夜おぼろづきよを たとる旅人
       カク  一松亭枝遊
  ふち枝
大名の お入りに宿の 亭主とて
つちにはなみる ふち枝の駅
              只住

◎島田から見附まで
  島田
大井川 あさき心も 宿の名の
島田わけには とまるたひ人
      イチバ 一桂亭五百丈
  金谷
たましひの 七ツ時ななつどきから 宿かりて
金谷かなやにとまる 春の旅人
              鈴成
  日坂
むけんてふ かねやつくらん あけてけさ
こかねのいろに さく福寿草ふくじゅそう
            鶯宿小紅
  かけ川
歌をよむ 鳥もとまれと 目印に
梅の花笠はながさ かけ川の宿
             六柯園
  袋井
ちりひとつ はかぬ座敷ざしきに 五味ごみをしも
いはふやとそ屠蘇の 袋井の宿
      トミ丘 三国舎日出成
  見付
人のミか たひうぐいすも 来てとまる
宿の見付みつけの むめのはなかさ
            醒々楼栞

◎浜松から吉田まで
  はま松
する 野辺のべ小松こまつハ さしおきて
まつみずをひく 浜まつの宿
             柯撰堂五瓢
  まひ坂
おしらか さへつる声も かしましゝ
これや雲雀ひばりの 舞坂の宿
              九峯舎静
  あらゐ
名物めいぶつの むなきもにおひ うハゝ奪われん
あら井の宿の 梅かかはやきかばやき
             哥多言大記
  白須か
はるの野に つまをハこいて なく雉子きじ
おのかありかを 人にしらすか
             社頭軒鈴彦
  ふた川
二川ふたがわの 火うち坂をも うちこへて
ほくちをさして かへるかりかね
               日出成
  よしだ
風吹はかぜふけば まねくさまあり ことわざ
よし田女郎衆じょろしゅに にハの青柳あおやぎ
                小紅

◎御油から地鯉鮒まで
  御油
ともし火の 御油ごゆの宿にも 春くれハ
身をもやしつゝ 妻乞つまこう雉子きじ
             酒泉楼友成
  赤坂
赤坂の やっこたこも 春風に
のほるかあれハ 下るのもあり
            三輪ノ屋杉守
やっこにも よふ赤坂の 宿なれハ
軒端のきばかおる やりむめの花
         ナルト 松樹軒保丸
  ふぢ川
旅人の 多き春とて 花よりも
かさの浪立なみたつ 藤川の駅
          ナルト 山辺秋人
  岡崎
あつさ弓 春立はるたちしより 矢はき矢作てふ
橋のうへにも かすみひくなり
              紅梅舎薫
  ちりふ(池鯉鮒)
夕風ゆうかぜに ひけるかすミの 網やれて
いつるやいづるや池の 鯉鮒りふの宿
               瓢駒雄

◎鳴海から庄野まで
  なるミ
きへのこる 雪もところの 名物と
かのこしほり鹿の子絞りに なるミてふ宿
              花岳春也
  みや
治まれる 御代みよにハ武士ぶしも やり梅の
ミやあふなしと さやまわりしつ
              雪ノ降時
  桑名
たひ人も けふハ七里しちりの 海の上
くハなくわたる 春のうららか
             泉水亭庭守
  四日市
こはあめに やどるも三日 四日市
いつか都の 春に逢ふへき
            升廼屋千代丸
  石やくし
さくむめの かなふつならて うくひすの
きてきょうをよむ 石薬師堂いしやくしどう
         ナルト 花王軒芳住
  庄野
宿の名の しやうのにまさる 匂ひかな
そよふく風の さそふ梅かゝ
                面也

◎亀山から水口まで
  亀山
旅人の 多き春とて 七ツ起ななつおき
六ツむつをかくさぬ 亀山の宿
             嵐山亭吹雪
  せき
春くれハ 関の地蔵の あたりまて
ふとしのやうに ひくかすみかな
                貫道
  坂の下
にわとりの さかの下とて 春の日の
七ツ時ななつどきより とまる旅人
             百六齋大浦
  土山
春雨の ふる土山を 大名の
けふをはれとて かさる宿入
             楓枝園月人
  水口
おしやれ女おじゃれめ はるの道者どうじゃに つく嘘の
たれも一はい くふどじょうしる
              五ツ島人

◎石部から京都まで
  石部
佐用姫の ごとこかれて焦がれて おのか身も
石部の野辺のべに 妻乞るこうるきし
         ナルト 梅泉亭澄男
  草津
七草の くさつの宿ハ 出女でおんな
口をたゝきて とめる旅人
                月人
  大津
うららかな 春ハかすみも ふた筋に
大津八丁はっちょう ひく車道くるまみち
             洒落齋起名
大津絵おおつえの 鬼の念仏に ひきかへて
法華経ほけきょうをよむ 春のうくひす
             万戸楼千門
ひきはへし かすみのまくに 大津おおつなる
あれしミやこの しかもかくしつ
             彩雲楼龍鳴
  京
さほ姫も 京女きょうおんなには はつかしと
かすみの衣を かつきてやくる
               六々園

気づき

○春足さん一門の狂歌を見ることが出来る好資料である。東海道五十三次をお江戸日本橋から出発して時計回りに廻り京に至る双六に仕立てており当時人気のあった趣向と思われる。中には神奈川や大津のように複数の狂歌が詠まれている箇所もある。上がりの京を詠んだ六々園がうまいのは当然として発端の日本橋を詠んだ卯時も先の月次金石狂歌集では上位に入賞しており春足さん一門では実力者だったことが伺われる。
〇総じてどの狂歌も秀逸。

東海道五十三次 狂歌双六アルバム(昭和37年 遠藤林太郎作)

撮影:遠藤雅義 / 分類:20250420-A131-02

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